法務省の公表によれば、今年3月末時点で在留している特定技能外国人数は22,567人とされています。
3月は特定技能の制度が施工されてちょうど2年が経つタイミングとなりますが、制度開始時に向こう5年間で見込まれていた受入れ最大数(345,150人)と比べると、まだ1割にも満たないという数です。
制度の見込み通りに受け入れが進まない背景には、新型コロナウィルスによる入国規制が少なからず影響していることが考えられますが、その一方で日本に在留している技能実習生らも帰国することが容易でないという側面もあり、またいつこうした状況が打開に向かうか確たる見通しが立てられないため、実習生のみならず外国人を雇用していた企業にとっても、実習修了後に在留を続けたまま継続就労が可能となる特定技能の在留資格は、国内で一つの選択肢として存在感を増しています。
特に母国への帰国がままならないばかりか、技能実習が修了したり、あるいは勤務先となる会社がコロナのあおりを受けて休職状態に追い込まれ、最悪の場合解雇されてしまうなどして、収入が絶たれ生活苦に陥るといった実習生や特定技能外国人が、現実問題として増えてしまったことから、法務省はこうした外国人が勤務先を移ってでも継続就労ができるように「特定活動」へ在留資格を変更し「働きながら特定技能に必要な試験を受けるための準備をする期間」として在留を認めています。
※在留資格「特定活動」は複数の種類があるものの、在留資格上の呼び方はすべて「特定活動」で括られているため、ここでは便宜的に上記のパターンの特定活動を「雇用維持支援特定活動」と以下呼称します。
本来、特定技能は「技能実習2号を修了」もしくは「特定技能評価試験と日本語基礎テストに合格」することが外国人への要件として定められていますが、先述のように技能実習を終える前に解雇されてしまったり、技能実習を修了したもののその時の作業が特定技能へ移行できる分野でないときには、特定技能評価試験を受ける以外に、特定技能外国人となるための要件を満たす手立てがなくなります。
こうした状況に加え、帰国が困難である状況と認められれば、雇用維持支援特定活動での在留申請をすることができます。
対象者:
(1)新型コロナウイルス感染症の影響により,受入れ機関又は受入れ予定機関の経営状況の悪化(倒産,人員整理,雇止め,採用内定の取消し等)等により,自己の責めに帰すべき事由によらずに当該機関において活動することができなくなり,現在の在留資格で日本に引き続き在留することが困難となった外国人
(注)現在有する在留資格に該当する活動を行うことができない次のような方が対象となります。
(1)技能実習生,特定技能外国人
(2)就労資格(「技術・人文知識・国際業務」,「技能」等)で就労していた外国人
(3)教育機関における所定の課程を修了した留学生(2)予定された技能実習を修了した技能実習生のうち新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響に伴う空港の閉鎖や移動の制限等を受けて,帰国便の確保や本国国内の居住地への帰宅が困難となった外国人(令和2年9月7日付けで新たに対象としました。)
法務省「新型コロナウイルス感染症の影響により実習が継続困難となった技能実習生等に対する雇用維持支援」より
この雇用維持支援特定活動で就労することができるのは、特定技能で就労が認められている14の業種に限られており、さらに製造業の3分野(素形材、産業機械製造、電気・電子情報関連産業)での就労はこの3分野に従事していた実習生などに限られるという条件がありますが、場合によっては業種をまたいだ事実上の転職が可能となっています。
この雇用維持支援特定活動の在留期間1年の間に、働きながら特定技能評価試験を受けて合格できれば、特定技能での在留資格申請ができるというこの手法は、今実習生の入国ができずに人手が足りない企業と、収入が断たれた実習生等の間で利害の一致するマッチング手段となっています。
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