【留学生】新型コロナウィルスと留学生制度

【留学生】新型コロナウィルスと留学生制度

農業・水産業等も同様に技能実習生が母国から渡航できないまま、人手の確保に頭を抱えるという話題も何度も取り上げており、また同様に日本語学校や専門学校へ入学予定だった留学生が来日できない状況も続いています。
すでに在留している留学生についても、アルバイトのシフトが減って生活費や学費の支弁に困窮したり、内定の取消にあうという事態も生じていることについて、留学生受入拡大路線を取った日本の国策のひずみが現れているという論説が挙がっています。

日本政府が2008年に打ち上げた「留学生30万人計画」は2020年までに在留留学生30万人を目指すという計画。実はすでに2019年末で31万人を超えており、国策としては目標を達成できています。
以前から留学生には経済的ハンデを負いながらも日本に在留する学生は多く、そこに今般の新型コロナウィルスによる景気悪化とその煽りを食らうことで、ますます留学生が経済的窮地に立たされているといいます。

20代のミイアインさんは日本に暮らして約5年。日本学校で2年にわたり日本語を勉強した後、専門学校で3年間学んだ。そして就職が決まり、この春からは飲食部門の企業で仕事を始める予定だった。しかし新型コロナウイルスの影響で、飲食部門が大きな打撃を受ける中、最近になり就職先の企業から入社時期を延期するとの連絡がきた。
「この春から就職できると思っていたので、つい最近、アルバイトをやめたばかりでした。今は収入がないので、ベトナムに戻るための旅費はありません。そんな中でも、家賃や食費はかかります。どうすればいいのか分かりません。」

仲介会社の中には、留学生の送り出しもビジネスとして進めるところもある。仲介会社が留学希望者を「リクルート」する際には、日本に留学すれば「学びながら働ける」として、アルバイト就労によって収入を得られることを強調することも少なくない。

仲介会社に払う高額の手数料や学費のために大きな借金を背負った上で就労目的で来日し、借金返済のために規定を超える時間アルバイトに従事する留学生もいる。筆者の聞き取り対象者の中には、借金を背負い日本に留学し、日本語学校に通いつつ規定を超える時間アルバイトをした結果、入管に摘発され、送還された元留学生もいる。この人の場合、日本留学で得られるものがなく、借金だけが残った。

Yahooニュース:「アルバイト減少」「内定取り消しの可能性」留学生から悲鳴、日本経済支える外国人と30万人計画のひずみ

確かにこの論説のように指摘されると、さも日本の出入国在留管理庁は留学希望者に対してフリーパスで入国許可を出しているかのように思われますが、賢明な諸兄はご存知の通り、日本に留学する場合には原則としてアルバイト等の就労手段がなくても学費や生活費を賄えるという経費支弁説明を在留資格申請を行う際にしなければなりません。
だからこそ留学生が行うアルバイトは「資格外活動」として入国後に許可を申請しなければならないし、そもそも留学ビザ自体に就労が認められいないという仕組みになっています。

つまりは出入国在留管理庁は「留学で来日する場合は原則としてアルバイト等をしなくても留学目的を達せられる態勢を整えた者でなければ在留許可は出せない」というスタンスであり、しかも近年その基準はより厳しくなっています。
それでも経済的窮地に立たされる学生が多いのは、そういう基準があることを理解している仲介会社やこのハードルを突破するために留学生本人などが在留申請時に借金をするなどして学費分の財産をかさ増しし、経費支弁能力として在留資格申請時に説明しているなどの背景があるためです。

このように日本側では経済的猶予がない場合でも留学することを推奨しているわけではなく、むしろ審査時には厳密にチェックしているわけで、万全とは言えないものの制度上の制限を設けているのが実情です。
そのため、一律に留学制度が悪いと論じるのはやや乱暴な判断であると言わざるを得ず、厳に留学制度を正しく運用すべき責任は仲介会社などにもあります。

また、更には「偽装留学生」という単語が意味するように、留学ビザで来日して実情はアルバイトに明け暮れる出稼ぎ留学生が横行したように、留学を簡易的な就労可能ビザと見なす海外の外国人が多いのも事実であり、過去にそうした留学来日経験のある人物が「日本ではバイトをしながら留学ビザで稼げる」と流布している地域もあります。

一方では一定のハードルはあるものの、留学と比べても働きやすい特定技能という新たな在留資格で働くことができるようになったことも、表面的には知っているけれど前例が無いのでその選択肢を取らないという外国人も多い模様です。
こうしたことから、日本の外国人材に対するセーフティネットの整備も課題ですが、今回の留学も含めて制度の正しい運用と情報を広めることに、日本での生活に困窮する外国人を減らすための最初の糸口があるものと考えられます。

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