昨今の出入国規制・検疫強化で渡航が難しい現状を踏まえ、法務省は実習期間が修了を迎えたりしても帰国できない技能実習生への猶予として「短期滞在(90日)」や「特定活動(3ヶ月)」へ在留資格を切り替える特例措置を4月3日時点でおこなっています。
これに対し、猶予期間後も事態が収束し、帰国できる環境が整っているいるとは限らないとして、そうした現場でこそ「特定技能」ビザが活用できるチャンスではないかという評論が出ています。
技能実習と違うところは、監理団体と呼ばれる紹介機関を通して受入れるのではなく、受入れ企業の直接雇用となることだ。実習生から従業員になれるということだ。
SankeiBiz『在留資格「特定技能」は、コロナウイルスを恐れる技能実習生の救いとなるか 』より
(中略)
出入国在留管理庁が延長期限を多少延ばしたとしても、実習生が祖国に帰った時、労働環境が安定しているとは考えにくい。
もしも実習生が、「特定技能」に在留資格を変更して、日本で従業員として安定した仕事を得られるとしたら、受入れ企業は実習生の生活を守れて自社の戦力を確保できる。いくつかの面でメリットは大きいのではないか。
確かに技能実習2号を修了していれば特定技能ビザの取得要件に求められる技能評価試験が免除され、特定技能への移行の準備が整っていない場合でも、準備期間として4ヶ月間は就労が可能な「特定活動」ビザに切り替えて滞在を続けることができる措置を法務省は実施しています。
そのため、特に問題なく技能実習2号を修了できていれば特定技能ビザに切り替えるための要件を外国人本人が満たすこと自体は、さほど難しくないと思われます。
しかし技能実習からすべての業種・作業が特定技能へ移行することができるわけではありません。
繊維・衣服関係、印刷・製本、家具製造などは特定技能受入対象業種でないため、これらの業種で技能実習を修了した外国人が特定技能に移行するためには、全く異なる職種の技能評価試験を受ける必要があります。
加えて、特定技能で雇用するにあたっては外国人だけでなく受入れを行う事業所に対しても要件が課されていることには注意が必要です。
特定技能外国人支援を専門に行う、登録支援機関に業務を委託すればかなり事業所の負担は軽減されますが、そうでない場合には在留変更に係る煩雑な書類手続(今般の事情を鑑みて、多少の簡素化が現在行われていますが…)を出入国在留管理庁とのやり取りを行い、報酬体系も日本人と同等以上と規定されていることから技能実習時から見直さなければならないかもしれません。
また事業所自体に過去5年以内に出入国・労働法令違反がないことや、特定技能外国人に従事させようとする作業で過去1年以内に非自発的な離職者が出ていないことなども前提条件とされており、採用にあたっては業種分野ごとに定められた協議会へ入会しなければならないなど、手続や準備は容易とは言い難い現状です。
政府方針としては特定技能を技能実習に代わる、あるいは技能実習を継承する今後の就労系ビザの主流にしたいという思惑があるため、今般の情勢下において技能実習修了後に特定技能に切り替えて滞在するというのは確かに有効な一手として選択肢に含まれることと思います。
ただし、冒頭に表記したような帰国困難者に対する措置が延長される可能性も残っており、外国人財と受入事業所それぞれの要件や事情に合わせて特定活動等での一時的な猶予を選ぶか、本腰を入れて特定技能への切り替えを進めるか、よく検討したうえで申請を行うことをおすすめします。
SankeiBizの引用元では「在留期間が切れても新型コロナウイルスの影響で帰れない実習生については、在留期間を30日延長するという措置をとった」という表記になっており、また法務省の『新型コロナウイルス感染症の感染拡大等を受けた技能実習生の在留諸申請の取扱いについて』のページでも本国への帰国が困難な方には「短期滞在(30日・就労不可)」「特定活動(30日・就労可)」への変更が可能と表記(4月9日現在)されていますが、これらの情報は古くなっており正しくありません。
法務省在留管理課へ問い合わせたところ、4月3日に猶予期間の伸長が行われ、帰国困難な実習生に対しては「短期滞在(90日・就労不可)」又は「特定活動(3か月・就労可)」への変更が可能となっています。(法務省ホームページについては更新が間に合っていないとのこと)
現時点での猶予期間や取り扱いについては、出入国管理庁から出されている下記の資料を確認して下さい。
なお、あくまで仮定の話としてですが、もしこの猶予期間終了後でも出国が困難だった場合にはこれらの短期滞在・特定活動の滞在期間がさらに延長されることもありうるという回答も得ており、今後もそうしたこうした更新があった場合には改めて告知するとしています。